住民税を死者に課する?!(1)

 宇都宮市のHP:https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/faq/zei/shiminzei/1001690.html より、 

質問 亡くなった人の市民税・県民税はどうなりますか。

 (父が平成31年の2月に死亡しました。父の市民税・県民税はどうなりますか

回答 市民税・県民税は毎年1月1日現在の状況に応じて課税しますので、1月1日に

  生存している場合には納税義務が生じることになります。

  具体的には、1月1日以前に死亡された方は納税義務が生じませんが、1月2日以後

       に死亡された方は納税義務が生じます。  

  死亡された方の納税義務は 相続人の方が引き継ぐことになりますので、

  平成31年の2月に死亡されたあなたのお父さんに課税される平成31年度の市民税

  ・県民税は、あなたを含めた相続人の方に納税していただくことになります。

  なお、平成32年度の市民税・県民税は、平成32年の1月1日時点で既に死亡されて

  いる為、課税されません。  

                            

   ※ 県民税と市町村民税を住民税といい、

     両者併せて市町村が徴収することになっている(地方税法第41条)。

 

ほとんどの市町村は、死者に対して当市と同じような対応をしているようです。

こうした対応は、地方税法第39条および第318条の

 個人の県民税(市町村民税)の賦課期日は、

   当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

という規定(県民税は第39条、市町村民税は第318条)によっている。

  ※ 総務省のHP より、個人住民税の概要PDF

 

一方、この「当該年度」というのは、地方自治法第208条 

 1.普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、

   翌年三月三十一日に終わるものとする。

 2.各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに

   充てなければならない。

 とあるので、平成31年度の市民税・県民税というのは、

2019年度の4月1日から 翌年2020年3月31日までの期間に対する税である。

しかし、質問者の父は、

この期間には すでに死亡していて、戸籍からは除籍されている。

つまり、

住民税は 死者を課税対象としている

という驚くべきことになっているのだ。

 

                                                                                                    

 

そもそも、死者は 日本国憲法の適用対象であろうか?

第10条に 日本国民たる要件は、法律で これを定める。

とあり、この法律は 国籍法である。

http://www.moj.go.jp/MINJI/kokusekiho.html

   その第一条には、日本国民たる要件はこの法律の定めるところによる。

とされ、(国籍の喪失)を規定している第11~13条には 

生者に対して規定するのみで、死者に関する記述はない。

 

また、憲法の第11条には

 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法

 国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、

 現在及び将来の国民に与へられる

 

死者には基本的人権は考えられない。死者は いかなる権利も主張する

ことがないから死者なのであろう? それに、日本国憲法は 過去の人、

つまり 死者の権利を保障するのではなく、これを 現在と将来の国民

にあたえる と言っている。 

こうしてみると、

日本国憲法は、当然ではあるが、生者を対象としたものであって、

死者を その法の対象とはしていないのである。

そして、

憲法死者を扱わず、ただ生者のみを その対象としている

ということは、条文に もちろん規定はない。

これは 日本国憲法の暗黙の前提なのである

 

 

そもそも、法律で、 

死者を何らかの権利者あるいは義務者とするものが、

この住民税以外に 何かあるのであろうか?!  

 

 たとえば、 

 個人情報の保護に関する法律」では、

  (定義)第2条 この法律において「個人情報とは、

   生存する個人に関する情報であって、・・・

とあり、死者の情報は保護の対象から外れているのである。

 

 地方税法に、死者への課税を禁ずる条文がない からといって、

これが 「死者には課税しない」という暗黙の前提はない

ということの証明にはならないであろう。

むしろ、死者に鞭打つような課税をするこの感覚は、

行政の倫理的な不感症を告白しているだけではないのだろうか?!