量的緩和 2005年05月31日
世の中のお金全体の額を増やして、お金の出回る量を増やし、そのお金で企業
の設備投資や運用を促す金融政策。
具体的には、都市銀行や地方銀行(市中銀行)の持っている国債や手形を日銀が
買い取って、市中銀行が日銀に持つ当座預金に その代金を置いて 当座預金残高
を増やすこと。
市中銀行は、日銀に置いてある当座預金残高の額に比例して融資(カネの貸出し)
を行うことができるため、この当座預金の残高を増やせば、融資額が増えていく
ことになる。また、当座預金の資金を使うことで世の中に出回るお金の量も増える
というわけである。
それまでの金融政策の主流は、日銀が金利を上げ下げすることだった。
景気が悪くなったら金利を下げてお金を借りやすくし(金融緩和)、景気が良く
なったら金利を上げてお金を借りにくくしていた(金融引き締め)。
そもそも金融政策の目的というのは、景気が良くなりすぎるのを抑えたり、悪く
なりすぎるのを良くしたりすること。
長らく続いていたゼロ金利政策が、教科書通りに景気を上向かせることができなく
なってきており、「お金の流通量」を調整することで、景気の調整を行おうとして
いるのが現在の金融政策。
現在の日銀の当座預金残高の目標は、量的緩和策により、30兆から35兆円程度
となっている。 2001年3月に、このルールを導入した直後は5兆円を目標にして
いた。その後、その効果がほとんど表れず、残高目標が徐々に引き上げられて、
2004年1月から、現在の30兆~35兆円下限目標になった。
※1999年2月からゼロ金利政策を取っていた政府は、IT産業が景気を引っ張る形
で日本経済が復活したと判断し、2000年8月に解除。その時には、まだ日本経済
は全般的には回復していなかったので、その直後に経営破綻した企業が続々現れ
た。スーパーのマイカルやゼネコンの青木建設など、IT産業以外はまだ体力が
回復していなかったのだ。
そのため今の日銀は、日本経済の回復ぶりをかなり慎重に見つめており、
現在の量的緩和の水準(30兆~35兆円)を続けるのは、消費者物価指数(CPI)
が安定的に前年比ゼロ%以上になるまで、という姿勢をアピールしている。
2005年5月20日に行われた日銀の金融政策決定会合でも、基本はあくまで
30兆~35兆円という目標をそのままに、一時的にそれを下回ることがあれば
容認する、という決定となった。この表現は、20日の金融政策決定会合直後
の市場の混乱を避けることができたものの、目標を弾力化するという分かり
にくさを残してしまった。
今後は、量的緩和の下限目標額をいつ、どの位減らすのか、また目標の解除
はいつなのか、という点が議論の焦点になる。日銀が金融政策の舵取りをちょっと
でも誤ると、日本経済の回復に悪影響を及ぼす。今後の日銀の金融政策には注目が
集まることだろう。